税理士同士の外注で信頼を損なわないための顧問先対応と
窓口設計

2026.6.26
税理士同士の外注で信頼を損なわないための顧問先対応と窓口設計

顧問先対応は、会計事務所の業務の中でも最重要の業務といっても過言ではありません。顧客を維持するための信用の多寡に大きく影響を及ぼす、負担の大きい業務です。
この業務について、税理士同士での外注ではどのようなことに気をつけていけば良いのでしょうか。詳しくご紹介いたします。

顧問先対応の重要性

会計事務所の業務の日常業務は多種多様ですが、その中でも顧問先対応は最重要の業務といっても過言ではありません。
領収書整理業務や記帳代行業務等も、正しく数字を取り扱い、顧客の納税額を計算するためにとても大切なことですが、顧客によってはそれらの書類の内容に関心が無く、整った帳簿を作成しても、税理士への評価に繋がらないことがあります。

また、領収書整理業務や記帳代行業務等においては、会計ソフトのAI化に伴い、税理士資格を保有していない人であっても、一定の基準までは作れるようになり、税理士業務としての需要が減ってきています。
顧問先対応のひとつである、簡単な会計処理や税法等に関する質問も、AI化により顧客自身がインターネット上で回答を見つけやすくなり、その需要は減りつつあります。

しかしながら、AIでは回答のしきれない、顧客の特殊事情下における税務判断や、回答内容の正確さにおいては、従来通り、税理士の回答が必要とされているところです。
AI化が進み、今後誰しもが簡単に会計処理や税額計算を行えるようになり、税理士資格の有効性が失われていくことが懸念されます。そのような状況下において税理士資格の有効性を示していくためには、生身の人間としての顧問先対応が重要となり、他の税理士との差別化をしやすいところになるでしょう。

信頼を損なわない顧問先対応

顧問先対応は重要な業務であると同時に、とても負担の大きい業務です。税理士が外注を選択する際は、負担が過多になっている状況が多いですが、負担が大きいからといって、顧問先対応を他の税理士に外注することには、留意が必要です。
顧問先対応は、最も顧客との信頼関係を深める業務です。分業化している会計事務所では、領収書整理や記帳代行業務を行う事務職員が多大な時間をかけてその顧客に向き合ったとしても、顧客が信用をおいて認識しているのは、その事務職員が作成した資料を説明したり相談に乗ったりする窓口の職員だけ、ということも少なくありません。

その職員が税理士資格を保有していなくても、顧客からの信頼が厚いあまりに、その職員が別の会計事務所に転職する際には、一緒に顧客も別の会計事務所に移ってしまう、ということも会計業界ではよく耳にすることです。
税理士資格を保有していない職員に依存する顧客がいることを踏まえると、税理士資格を保有している人に顧問先対応外注することで、顧客を奪われることは想像に難くありません。
顧客が外注先の税理士に信頼をおいて依存することによる顧客流出の危険性がある一方で、外注先の税理士に信頼がおけず外注元の自身の評価が悪くなることによる顧客流出の危険もあります。

税理士資格を有しているという一定の知識の担保はありますが、顧客の視点からの対応の良し悪しは、資格があることだけでは測れません。よって、顧問先対応については、外注先の税理士に業務提携後すぐに依頼することはおすすめできません。
会計処理上に必要となる軽微な質問も含めて顧客との直接連絡を取るのは外注元の自身のみ、軽微な質問は外注先の税理士が対応をするが顧客の経営判断に影響をする話題については外注元の自身に代わる等、顧客流出や信頼の低下の危険が少なくなるように、一定のルールをあらかじめ定めて業務を依頼するようにしましょう。

信頼を損ないにくい窓口設計

上記のように、業務依頼の際に顧問先対応についてのルールを定めることと共に、そのルールが正しく運用されているかの確認も必要です。
顧問先対応を他の税理士に外注することで負担を軽減するためには、その依頼した業務については一切関与しないことが簡単な手法ですが、顧問先対応についても一切関与しないこととすると、ルールが正しく運用されているのか不明瞭になってしまいます。

ルールが正しく運用されているのか確認するためには、顧客と外注先の税理士との打ち合わせに同席する、自身を含めたグループチャットでやりとりを行うようにする等、連絡内容について常に把握をしておくようにします。
外注先の税理士に顧問先対応を一任していたとしても、常に連絡内容や状況を把握することで、外注元では何か問題が生じた際に素早く助言をすることができるというメリット、外注先や顧客では日常的に会話に加わっていなくとも、外注元の目があるという安心感を得られるというメリットがあります。

信頼を得ることだけが良い窓口業務
ではない

外注先の税理士が顧客からの信頼を得て、外注元との自身とも良好な関係を維持していれば、顧客の流出は防ぐことができます。
しかし、外注先の税理士が顧客からの信頼を得る方法を誤っている場合には、後々に外注をして負担を軽減する予定だったものが、むしろ増加してしまうという問題を引き起こす可能性があります。

信頼を得る方法として誤っている例として、外注先の税理士が業務を安請け合いしてしまうことが挙げられます。発注元の税理士との契約書で交わしていない業務を、勝手に受注し、それを発注元に相談なく無料で承ってしまうような場合、頼めばやってくれる便利屋として外注先の税理士の顧客からの評価はあがりますが、無断での業務サービスの無償提供は発注元の損失となります。

外注先の税理士がお人好しであり、その業務サービスの無償提供に対する金銭的な見返りを発注元に求めなかったとしても、本来依頼をする予定だった業務が依頼できなくなる、無償提供してくれるという認識が顧客間で広まって報酬を得る機会を失う等の可能性があります。
このように、顧客からの信頼を得ていても、外注先の税理士が顧客からの信頼を得る方法を誤っている場合があると、それは外注元にとって良い窓口業務とはいえなくなるため、連絡内容について常に把握をしておくことが望ましいです。

まとめ

このように、顧問先対応は外注先の税理士に外注をして一任する際には、顧客流出の危険に備え、顧問先対応の範囲についてのルール作り、そのルールが正しく運用されているかの把握が必要です。
連絡ツールを共有して伴走する等のリアルタイムでの把握、それが難しい場合には定期的に顧客と顔を合わせる等、一任して顧問先対応が知らぬ間に予期せぬ方向へ行ってしまうことが無いよう、留意をしながら外注をするようにしましょう。